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センス・オブ・ユーモア

新聞は、朝刊よりも夕刊をよく読む。夕刊は、政治や経済よりも人物記的な記事やエッセイが多く、読み物としてたのしめるからである。

 

きょうの夕刊に、作家北杜夫の「追憶の風景」というインタビュー記事が載っていた。北杜夫の生家は父親の斎藤茂吉が院長をしていた青山脳病院であり、戦時下にそこで迎えた少年時代の空襲とその惨状をたんたんと述べている。

そして、そこに添えられている近影が、じつに澄みきった天使のような笑顔なのでうれしくなった。私は高校時代、氏の“ドクトル・マンボウシリーズ”の大ファンだったのだ。

 

北氏の御令嬢で随筆家の斎藤由香氏は、私の友人のアートディレクターK 君の奥方である。K には、私の初めての著書の装丁もお願いした。

4年前の夏、御著書をいただいたお礼状を由香氏に書いた。その中で、私は高校時代から北杜夫氏の熱烈なファンでしたということを縷々書いた。すると、彼女からの丁寧な返信とともに北氏ご本人からも葉書が届いた。

その自家製葉書の下のスペースには、布団に寝ているカエルの絵が描いてある。その上には、「いろいろに使える万能ハガキ」の文字。それにつづいて、「賀春 暑中 季節の変わり目 寒中お見舞い 祝(悼) ご誕生 合格 落第 御成婚 御離婚 一層のご健勝をお祈りいたします」と書かれており、“暑中”と“お見舞い”のところがボールペンで丸く囲まれていた。そして、北杜夫の自筆サイン。

ドクトル・マンボウのユーモア精神健在なり、と私は大いに感激した。

躁鬱の大家、マンボウ氏はこのユーモアをもって、ときに極端に走りがちな自らのこころを何とか御してきたのであろうと推察した。

 

日本の政治家に、もっとも欠けているのはユーモアである。

しかし、ユーモアのある人間は政治家になんてならない。


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