戦場のカメラマン
深夜近く、アメリカの女性作家が書いたきわめて良質なミステリーを読み終えて、テレビをつけた。すると、ちょうどNHKで「ディープピープル」という番組が始まったところだった。
今夜は、「戦場カメラマン」特集だそうである。出演は“不肖宮嶋”で知られている宮嶋茂樹、アメリカの通信社で名を馳せている高橋邦典、そしてあのバラエティ番組で有名な渡部陽一。この3人による鼎談である。しかし、鼎談なのに前半はほとんど渡部を無視して、宮嶋と高橋が顔を向けあって話している。こんな鼎談見たことない。でも彼らの気持ちが、私にはよくわかる。プロふたりとシロウトひとりの鼎談なのである。言葉の重みがまったくちがう。
プロのふたりは、弾丸が耳のそばを飛び交うときの音の話をしている。防弾チョッキ選びの実用的なブランドの話もしている。そのとき、ふたりは渡部をまったく無視。渡部はイヤだったろうな。その世界での、自分のインチキ度がテレビで露呈されるわけだから。そのせいか、彼の目は終始おどおどと泳いでいた。
しかし、彼だけが絵に描いたような戦場カメラマンの服装をしている。ベレー帽に、フイッシングベストである。しかし、ふつうの社会にいて、そのいかにもなコスプレをすることが面白過ぎる。昔の東宝喜劇映画で、絵描き役がベレー帽にルパシカを着るような滑稽さなのである。
戦場カメラマン、戦場ジャーナリストというのは、ひとの不幸を飯の種にする職業だと私はおもっている。しかし、誰かがその現実を伝えなければならないという意味で、きわめて重要な仕事でもある。アーネスト・ヘミングウェイも、ロバート・キャパも、沢田教一も、開高健も、そのことを重々自覚しながら戦場に赴いたのである。
きょうの番組で、宮嶋茂樹が「ぼくは食うため、金のために、戦場の写真を撮っているんです」と自嘲気味に言ってたが、それは彼の照れであり、自戒でもあろう。
渡部陽一は、「平和な世界を願って」ですと。その言葉の、なんとも紙風船のように軽いことよ。
しかし、彼らの撮った写真も紹介されていたが、高橋邦典の作品が抜きんでてレベルが高かった。やはり、海外のジャーナリズムを相手に生き抜いてきただけのクオリティがあるのである。けた違いだった。
どこに暮らしていても、この世は戦場である。しかし、そこに一輪の花を見るのも人間なのだ。
僕は渡辺陽一が大好きです。コメディアンとして。
NHKは、単に視聴率確保のためだけに彼をキャスティングしたのでしょうが、図らずもリアルとフェイクの違いを白日の下に曝してしまう結果になったわけですね。
まさに怪我の功名。
by KEVIN (2011-02-20 11:39)
NHKはときどき粋なことをします。
亀田長兄の最初の世界戦のとき、その後の時間帯でNHKがやった番組は日本人で初めて世界チャンピオンになった白井義男でした。本当の世界チャンピオンの特集でした。痛烈な嫌みでしょう。ちなみにNHKは亀田兄弟のことをニュースで取り上げたことすらないと思います。
渡辺陽一はぬけぬけと「世界平和のため」とか言っても、何か裏がありそうな感じでもなく、誰かに媚びを売っている様子もなく、いやらしさを感じないので、まあそれほど嫌いでもないです。ただもう飽きたかな。
3年前、23年ぶりに成田山の初詣に女房と行き、私はこう祈りしました。
「世界中のみなさんが幸せになりますように」(本当)
その1週間後に空き巣に入られ、1ヶ月後に女房がリストラに遭い、3ヶ月後に私は右ヒザを骨折して1ヶ月入院しました。身の丈に合ったお願いがいいようです。
by pescador (2011-02-21 00:12)
「ベレー帽にルパシカ」といえば、かの大久保清を連想しますネ。
渡辺陽一サン、いっそのことド派手なタスキに「戦場カメラマン本人」
とでも大書してピン芸人の線を追求したら如何かと。となると、
目指すは鳥肌実あたりでしょうか。…あ、鳥肌実はテレビじゃ無理か。
by outsider (2011-02-22 20:16)